BsBsこうしょう

これは考えたことではなく思ったことです。

ポピュラー和声のダイアトニックコードと代理和音

この記事は何

Wikipediaの記事「ポピュラー和声」を、自分が理解できる形で読解したノートである。基本的な和声に関する法則、用語などへの理解を前提とする。

ja.wikipedia.org

と言ってもこの記事自体、初心者が書いた初心者向けの記事ではある……。

基礎事項

  • 基本的に長調のみを扱う。
    • ポピュラー音楽では短調はほぼ出てこないため
  • 根音の等しい三和音(triad)と四和音(tetrad)は和声的に全く同一である。ただし7度の音は調の構成音になるように調整する(多分ノンダイアトニックでも使っていいと思う。要研究)
  • 長音階と自然短音階は同一視する。つまりある長調のキーに対して平行調の関係にある短調は同一視する。
  • 以下の記事では、C dura mollの組み合わせに属する和音についてのみ取り上げる。

ダイアトニックコードとカデンツ

ダイアトニックコード

長調短調のダイアトニックコードを以下に示す。

長調から見た)和声  I_{△7}, I_{6}  IIm_{7}, IIm_{6}  IIIm_{7}  IV_{△7}, IV_{6}  V_{7}  VIm_{7}  VIIm_{7}(-5)
長調から見た)機能 T S' T'(D') S D T' D'(?)
コード名 CM7, C6 Dm7, Dm6 Em7 FM7, F6 G7 Am7 Bm7(-5)
短調から見た)機能 T' SM D SM'(T') SM'(D') T SM'
短調から見た)和声  ♭IIIm_{△7}, ♭IIIm_{6}  IVm_{7}, IVm_{6}  Vm_{7}  ♭VI_{△7}, ♭VI_{6}  VII_{7}  Im_{7}  IIm_{7}(-5)

これらの和声の間では機能をカデンツのルール内で自由に設定することができる。例えば突然転調しても良い(そしてそれは和声的に見分けが付きにくい)ということになる。

和声だけ見ればややこしいが、あくまで調の構成音上の話しかしていないため、実際に押さえてみると非常にシンプル。

カデンツ

和声の進行を表すカデンツは以下のみ許容される。

  • T - D - T
  • T - S - T
    • T - SM - T
    • T - S - SM - T
  • T - S - D - T
    • T - SM - D - T
    • T - S - SM - D - T

ただし、楽節の区切りにおいて最後の和声をTにしないことは許容される(半終止)。半終止Dで終わった場合、直後の和声をSまたはSMにする形はよく見られ、こちらも許容される。

代理和音

調の構成音でないコード、ノンダイアトニックコードが唐突に使われることがある。このような形で使われるコードは代理和音であり、同機能を持つ他のコード(ダイアトニックコード)と互いに交換可能である。

以下に代理和音を示す。

長調における代理和音

 I_{7}

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 I_{7}であるC7とI_{△7}であるCM7
  • 機能: T

 I_{△7}から、第七音を半音下げた和声である。Iの代理として比較的使われがちなコード。下属調のVでもあるため、下属調への転調、転調からの復帰、転調に見せかけた進行などでよく使われている。

 ♯IVm_{7}(-5)

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 ♯IVm_{7}(-5)であるF#m7(-5)
  • 機能: T

 IV_{△7}の根音を半音上げた音だが、Tである I_{6}と構成音が多く共通するため、Tとして扱われる。 IV_{△7}と瓜二つなので、これとつなげたクリシェがおいしい。

 ♭II_{7}

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 ♭II_{7}と裏コードの V_{7}
  • 機能: D

 V_{7}の裏コード。 V_{7}と同じDであるとはとても思えないコードだが、限定進行の音程(VIIとIII)が共通している(増四の音程、トライトーン)ので、Dとして利用可能であるという理屈だと考えられる。和声的に解釈するならば、この2音は限定進行させた方が美しくなると思う。 I_{△7} IIm_{7}からのクリシェが実現できる。

 IV_{7}

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 IV_{7}と元となった IV_{△7}、そしてドイツの六度
  • 機能: S

分かりやすい IV_{△7}の変形。 I_{7}と同じく、使われがちな形。 VII_{7}の裏コードでもあるため、 IIIm_{7}につなげたい音らしい。

Wikipediaではドイツの六度との関連性が指摘されているが、比べても共通点があまり分からなかった。

 VII_{7}

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 VII_{7}と元になった VIIm_{7}(-5)
  • 機能: S

そもそもVII自体ポップスでもクラシックでもあまり見ないのだが、ポップスの文脈では、VIIに関しては代理和音である VII_{7}の方が使われているまでありそう。 IIImセカンダリドミナントなので、 IIImに接続すると綺麗か。

 ♭II_{△7}

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 ♭II_{△7}
  • 機能: S

長調におけるナポリ六度。IIではなくIVの変形として捉えるのが正しいらしい。

 ♭VI_{7}

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 ♭VI_{7}と元になった ♭VI_{△7}, IVm_{7}
  • 機能: SM

長調にはSMの和声はないのになぜSMの代理和音? と思うかもしれない。長調では同主調短調からの借用和音IVmをよく使うことがあり、その代理和音ということのようだ。その意味では代理和音の代理和音と言えるかもしれない?

WikipediaにはVIからの変形であると述べられているが、その経緯を踏まえるとIVmからの変形としたほうが適切だろう。また、当然ながらSMの機能を持つ代理和音は短調でも使用可能である。

 ♭VII_{7}

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 ♭VII_{7}と元になった Fm_{7}

  • 機能: SM

こちらもIVmの代理和音として使われる。同主調短調でのVIを使っているので別に ♭VII_{△7}を代理和音にしてもいい気がする……。

短調における代理和音

 ♭II_{7}

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a mollにおける ♭II_{7}であるB♭7(このあたりから自信ない)
  • 機能: D
  • 長調における和声:  ♭VII_{7} (SM)

減五度上、すなわち#IV(長調の場合#II)を主音とした短調からの借用和音。また、V7の裏コードでもある。

裏コードなのでIに接続したいお気持ちになるが、借用先ではVに当たるため、長調で使う場合 VII_{7}なんかに接続してみても面白いかもしれない。

 ♭VII_{7}

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a mollにおける ♭VII_{7}であるG7(ホンマか?)
  • 機能: S
  • 長調における和声:  V_{7} (D)

これ書いてあること矛盾してないですか?

 ♭II_{△7}

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a mollにおける ♭II_{△7}であるB♭M7
  • 機能: SM
  • 長調における和声: 存在しない

短調におけるナポリ六度。クラシックの文脈においては、ナポリ六度はDに進むのが鉄則とされる。

 ♭VI_{7}

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a mollにおける ♭VI_{7}であるF7
  • 機能: SM
  • 長調における和声:  IV_{7} (S)

ブルーノートスケールに従い、 ♭VI_{△7}の第七音が半音下がったコード。

ここまで省略したが、ブルーノートスケールに転じた代理和音は、ジャズやブルースの文脈で用いられることが多い。

今後の課題

  • 裏コードのついての理解を深める。記事も書きたい。
  • テンションとアドリブについてもいつか勉強したい。
  • もちろんだがこの記事もまだ消化不足なので頑張って消化したい。

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