BsBsこうしょう

これは考えたことではなく思ったことです。

8/7~8/9, 8/16~8/19聞いた音楽

お盆休みを挟んだので2週分で1週分くらい。

Enrique Granados, Granados: Goyescas

エンリケ・グラナドスはスペイン人の作曲家(故人)。スペインを代表する大作曲家のひとり*1である。

日本では スペイン舞曲集"12 danzas españolas"と、このGoyescasがよく知られている。

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スペイン舞曲集は丁寧に弾くとなかなか骨のある楽曲というような、ざっくり緩めの楽曲集なのだが、Goyescasはグラナドスの持てる力を全て結集したかのようなテクニカルな曲になっている。

しかしテクニカルでありながらも、グラナドスの特徴である濁りのない美しい和声は保たれており、聞く側に負担を要求しない作りになっているのがすごい。

ただそのせいかは分からないが、全部一様に聞こえてしまうのがこの曲集の難点だ。おそらくメロディラインにもう少し工夫する余地があるということなのだろうが、作曲の難しさを感じる。

なお、Goyescasには幻の8曲目が存在し、そちらも別途検索して聞くことができる。

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Esbjörn Svensson Trio, Seven Days of Falling

Esbjörn Svensson Trioはスウェーデン人のジャズユニット(解散済み)。かなり高名なグループらしく、Wikipediaに日本語の記事があるほどだ。

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これらの曲は今のジャンル分けだと、ジャズには分類されなさそうな気がする。去年か一昨年chillという言葉が流行り、Chillout Musicなるジャンルが作られたが、まさにchilloutにぴったりなイメージの曲調だと思う。以前大西順子のときにも言ったが、こういう音楽を音楽として仕上げられる人は本当に上手い音楽家だと思う。自分も作れるようになりたいけど、コード進行の引き出しが少なくて変な感じになっちゃうのよねぇ。即興演奏の訓練を積みたい。

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少しchillからは遠ざかるのだが、この曲が特に気に入っている。再掲したときに気づいたが、Mingle in the Mincing-Machine (ミンチ機で混ぜ合わせて) という曲名もちょっとおしゃれで良い。この曲はchillでありながらも比較的ジャズの面影を強く残している。

このユニットについてだが、Wikipediaに以下のような記述がある。

スヴェンソンは2008年6月14日、妻と2人の息子を残したまま、ストックホルムでスキューバダイビングの事故により死亡した。

E.S.T. - Wikipedia

記事には明言されていないが、メンバーの死が直接的な原因となってこのグループは解散に至ったようだ。享年44歳。人生の先行きの分からなさ、栄枯盛衰、そういった感情が湧き上がってくる。私もあなたも、明日には死んでいるかもしれない。そう思って生きるのが大事なのだと思う。私も早く色々やっておかないとな……。

アサルトリリィ【All Songs Playlist】

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アサルトリリィは何かいろいろやってるメディアミックス*2

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知人にずいぶん入れ込んでいる人がいるので、それに影響される形で聞く流れとなった。

アサルトリリィは世界観がマヴラブ オルタネイティヴとかストライクウィッチーズとかの感じのアレ*3で、まあまあ重たい話。こういうクチの話は好きなので、アニメもちょこちょこ時間を見つけて視聴している。

話は重たいのだが、百合要素を入れたりすることで話の調子を柔らかくする工夫がされており、シリアス好きとゆるふわ好き層の両方を取ろうという気概を感じる。それは音楽にも表れていて、ユニット曲が全体的に凛々しくカッコいい曲調で作られている一方、ゴリゴリのセリフが入ったキャラソンがあるなど、温度差が極めて激しい。

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これとこれが同居するアルバムすごくないですか? 貪欲すぎるだろ……

温度差が激しいんだけど、強い方の曲をよく調べると俊龍だったりする。俊龍の癖、強すぎる。

ただ、まああんまり好きな方の作風じゃないね。

Lejaren Hiller, Robert Baker, John Melby: Computer Cantata

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Computer Cantataは計算機によって作られた楽曲のうち、かなり初期の作品(1964)。このことを題材にした論文も提出されている。自動作曲は日本語ではアルゴリズム作曲法というWikipediaの記事があり、そこである程度概観がまとまっている。

Computer Cantata: A Study in Compositional Method

残念ながら論文の中身を確認することはできないが、ここでアルゴリズム作曲法の初期の手法についておさらいしておこう。

アルゴリズム作曲法では「次の音高は前の(いくつかの)音高に依存する」という仮定を用いて、次の音を決定する。これは一般にマルコフ過程と呼ばれる。

ある音、例えばC-durでCの音があったとき、次の音になりうる音高は、ダイアトニックな音(白鍵)なら8つ、ノンダイアトニックなものまで含むと(黒鍵)13個存在する*4。ただ、コンピュータで処理するうえでは、音を延ばす操作も別に数えたほうが都合がいいので、全部で9通り(14通り)の遷移が存在することになる。

これらの異なる2つの状態に対する遷移する形を初期値として与えることで、$9 \times 9$ あるいは $13 \times 13$ の遷移行列が完成する。あとは最初の音を与えてやることで、行列に基づいた演算をすることで自動で作曲することができる。

Computer Cantataでは基本はこの理論に従っているが、いくつかの点で異なる。最も異なる点は音の高さと音の長さと音量を別にして管理したことである。つまり、「次の音の高さに関する遷移行列」と「次の音の長さに関する遷移行列」と「次の音の大きさに関する遷移行列」の3つを用意し、すべてについてマルコフ過程を使って動かしたことに目新しさがある。

実際に聞いてみると、解釈は分かれそうだが、何とか音楽としての体裁を保っているように感じられる。ある程度現代音楽に聞き慣れていれば、そういうものとして聞くことができるだろう。

ただ、少し音楽の知識があれば上記のアルゴリズム作曲法は問題があることが分かるだろう。

音楽が持つ不思議な性質のひとつに、「たとえ初見の音楽であっても、曲が終わりそうな兆候を察知することができる」というものがある。もちろん作曲家が終わりをデザインして曲を書くというのはその通りなのだが、聴衆はそのデザインを感じ取ることができるのだ。

このことを念頭に置いてアルゴリズム作曲法を再び眺めてみると、問題点がはっきり分かるだろう。マルコフ過程では終わりに向けたデザインが一切できないのだ。そのため、この手法をそのまま使って自動作曲を使うと、突然1曲が終わってしまう違和感に悩まされることになる*5

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現代音楽の例として、一柳彗のピアノメディアを挙げてみよう。もはや音楽と呼んでいいものかよく分からないこの曲でも*6、最後40秒ほどにかけて、終わりに向かうエネルギーをしっかり感じ取ることができるはずだ。これこそが、アルゴリズムにはできないものの一端である。

もちろん、これ以外にもマルコフ過程による作曲アルゴリズムには問題がある。ただ、このアルゴリズムについては本当に初期も初期のものなので、多くの改良案があるだろう。

例えば、最近精力的に自動作曲を試みている医師のすきえんてぃあさんの作品を取り上げてみると、かなり人間の作る音楽に近づいていることが分かる。

youtu.be

しかし、楽曲の終わらせ方には苦慮しているようで、この曲もフェードアウトで誤魔化すように終了してしまう。曲の終わらせ方には理論らしい理論が存在するわけではないが、奥深く、難解だ。

終わりに(雑記)

最近、自分の中で THE IDOLM@STER MILLION LIVE! が話題である。ミリオンライブは、全ファンが数年間*7待ちに待ち望んだアニメが、先週金曜日からテレビ放映を映画館で先取りという形で公開されており、自分のタイムラインにもその感想が続々と届いている。見に行きたくなってきたなチクショー。

本放映版はもちろん楽しみなのだが、それに向けて自分の心も準備運動をしているということだろうか。あまりにも楽しみすぎて、Spotifyのミリオンライブまとめを聞き漁ってお気に入りの曲リストを作成してしまったほどだ。

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また、先日papagenoさん主導で「アイマスP室内楽コンサート」が催され、そこでミリオンライブの曲が多く演奏されたことも関係しているかもしれない。曲が多いコンテンツで刺さるやつが出ると、やばい!

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本放映は10月。今のところ新曲はなさそう? 今のところ評判は良いようだが、巨大コンテンツ消費者はコンテンツ外のこと知らないがちなので客観的に評価できているとは言い難いというのが現状だ。いずれにせよ、本放送のときが楽しみである。

*1:もう一人はアルベニス。こちらも良い

*2:舞台が中心だと思うのだが、模型もやっていたりしてどこに軸があるか分からない。舞台と模型、普通交差する??

*3:通常兵器が効かない謎の生命体が現れて人類が危機に陥るやつ

*4:同音連打があるので1オクターブの音の数より多くなる。

*5:おそらく、そういった効果を狙った楽曲はすでに多く存在する。

*6:紛れもなく名曲ではあるのだが。

*7:初報が出て5年は経ってると思う