今週も忙しくて少なめ。
György Kurtág: Játékok
ジェルジュ・クルターグは、ルーマニア出身のハンガリーの作曲家。なんと御年97歳で存命である。結構有名人っぽくて日本語のWikipediaにもそこそこ充実した記事があるが、まあいつものごとく寡聞にして存じ上げなかったわけである。
『Játékok』、日本語では『遊び』と訳されるこの曲集は、非常に短い曲を集めた小品集となっている。Wikipediaによると、子どものためを考えて作られた平易な曲集で、クルターグが生涯にわたって作曲し続けている小品を収めた、まさにクルターグの人生そのものといった作品のようだ。
では楽に聞けるかというとそうではなく、クルターグ自身の現代音楽のルーツである表現主義に影響を受けた、非常に解釈が難解な曲が続く*1。武満徹のピアノ独奏なんかを聞いてもしばしば思うことなのだが、「これを子どもに演奏させる気なのかアンタは!?」となること請け合いの曲集だ*2。もちろん、レベル的には子どもでも十分弾けるだろうが……
個人的には、非常に短いことも相まって実験音楽*3のような性質を持った音楽のように感じた。
例えばこのII/33: Jumping Fifthでは、5度のスタッカートの跳躍がメインの、というかほぼそれのみによって構成された非常に短い音楽だ。タイトルが Jumping Fifth (5度の跳躍) であることから、クルターグがこの曲を作曲するときに、「5度だけで音楽を構成したらどうなるだろう?」といったことを考えていたであろうことが容易に読み取れる。そして、それは既存の発想にとらわれない新しい表現を研究する作曲家の姿勢にほかならない。
自分もピアノを弾くので、「こういう音はどうだろう?」と音列をいろいろと試してみることはよくあるが、自分が考えた発想の一部が、(より現代的なとがった形で)クルターグのこの曲集の中に現れている曲が一部にあるのは、とても興味深かった。やはり自分が考える程度のことは過去の巨人は試しているのだ。
例えばこれは同音連打の通奏の実験。
これは(少し変則的だが)調和的でない重音トリルの実験。
まあそういうことで、とても好ましい作曲家のように感じた。もっとも大半の曲は自分が好むには複雑すぎるのだが、既存の/新規のルールに縛られない、自己の内面にのみ着目した表現主義という音楽は、とても自分のやり方に適合していると思えた。まあ、自分が作るともっとルールに縛られた感じの音楽になっちゃうけど。
最後に、純粋にいちばん良かった曲を。この曲はこの曲集の中では比較的旧態依然の音楽のように感じた。
地球の音楽52 ミャンマー ヤンゴンとマンダレーの古典音楽
読んでいる本に付属のCDがあったので全曲聞いた。読んだ本は徳丸吉彦の『音楽とは何か』。
著者である徳丸吉彦の学会発表論文やその他刊行物をいくつかまとめた書籍となっており、もとが論文なので非常に重厚である。今まで読んだ本の中で何番目かに難しいと思う。
その中で民族音楽学、「諸国の伝統音楽がその集団の中でどのような文脈を持っているか? 近接地域と比較した違いはどうか*4?」といったことを研究する学問におけるセクションにおいて、ミャンマーの音楽が大きく取り上げられていた。
曰く、ミャンマーは日本のような西洋音楽による侵略が行われず、従前の古典伝統音楽の形式が現在でも民衆の間で人気の高い極めて珍しい文化を持ち、西洋音楽文化やその他諸地域(タイなど)の音楽文化と自国の伝統的な価値観を融合した新しい音楽を今でも生み続けている、しかも、それが広く受容されているようである。すごい。
このCDはそのようなミャンマー音楽の現代的な部分にも少し触れつつ、ミャンマー音楽の各楽器はどのように演奏されるか、ミャンマー音楽の音階はどうなっているかといった初歩的な学習に軸足を置いた基礎分権的な内容となっている。1曲目の『序曲「パナマ」』なんかは曲名から見るからに現代ミャンマー音楽的だが、それ以外はかなり伝統的な性質を固持した構成の音楽になっていると感じた。
その中でもモン族の楽器である、大きなワニの形をした撥弦楽器ミジョーン(鰐琴)の音は、古典的な民族楽器の枠に収まらない面白い音をしている楽器だと感じた。日本語だと資料出てこんし、英語だとどう書くか分からんし、終わっとる。助けてくれ~
終わりに(雑記)
最近、マジで生活が破滅しています。
きっかけはニコニコ動画でドカ食い気絶部の有名な人の動画を見てしまったこと。
見るからにダメそうって分かるこの食べ物。
それ以降ズルズルと料理する系実況者やドカ食い系実況者の動画を見てしまい、「ちゃんとした設備で料理して~」の気持ちがどんどん膨れていくことに……。ウチ、生活に必要な最低限の資源もないんすよ。貧乏なので。。
料理は正直年とってからでも全然間に合う趣味なんで、今はピアノを弾かないとね。ピアノも行き詰まりを見せているので、じっくり詰めていきたいね。ここで踏ん張れるかが分かれ目な気がしています。