BsBsこうしょう

これは考えたことではなく思ったことです。

8/28~9/1聞いた音楽

忙しくない週がなくなってしまい困った。ピアノも弾かないといけないのに…

中能島欣一作品集1~3

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中能島欣一は日本の筝曲家*1 (故人)。人間国宝。従前の伝統的な筝曲の奏法を守ったことはもちろん、西洋音楽の知識や才能にも明るく、現代邦楽と言われる邦楽のジャンルを完成させた。

中能島欣一は自身のオリジナルの曲もいくつも手掛けており、この作品集はおそらくそのような作品を集めたものだろうと考えられる。

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このひぐらしの最後の方、筝の音だけでヒグラシの鳴き声を表現しているシーンがあってかなり驚いた。楽器で動物の鳴き声を表現する試みは、有名なものだとベートーヴェン交響曲第6番田園など多くあるが、意識して聞いたのは初めてだった。

衝撃的だったので採譜してみることにした。10分で採譜したので、おそらくこんな感じという話だが*2

ヒグラシの鳴き声

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中能島欣一は西洋音楽的なテクニックや音使いを日本の伝統音楽に持ち込んだわけだが、ヴィーナーに寄せてなどはその思想が分かりやすく表れている。

かつて明治期に北村季晴らが持ち込んだとされている日本の伝統楽器と西洋の楽器の合奏だが、その当時は物珍しい以上の価値は何も生み出すことはできなかった。それからおそらく半世紀以上が経過したころのこの曲は、オーボエと筝が見事な融合が果たされている。そう感じるのは、作曲家や演奏家の楽器に対する理解が深まったからなのか、それとも聴衆である我々の感受性が十分に成熟したからなのだろうか? この曲に関して言えば、オーボエのほうが日本音楽に寄り添った部分が大きそうである。和声の使い方など、一曲くらいはちゃんと勉強のために採譜しておくべきな気がする。

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逆にこの曲なんかは思い描く日本音楽のイメージに近いのではないだろうか。いやはやしかし、我々が日本音楽、邦楽として知っているものの大半は、中能島欣一の一世代前の音楽人らが推進した新日本音楽*3の潮流にあることを忘れてはならない。個人的にはこの曲はかなり日本っぽいと感じるが、本当に邦楽であるかどうかは江戸期の各種邦楽を聞いて判断する必要があると思う。

採譜は面倒なんだよなぁ。どっかに五線譜の楽譜ないかなぁ。

柴田南雄: 追分節

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柴田南雄は、日本人の作曲家、音楽評論家(故人)。多分、作曲家としては声楽の現代音楽を中心に作曲した人である。追分節考もそのひとつで、非常に簡略化した説明をすれば、相互の調整を一切行わず、脈絡なく複数の音楽を同時に再生する試みである。

追分節考は非常に大人数で行う合唱曲(?)で、演奏者たる各人はどのように歌うかはあらかじめ指示されている。しかし、楽譜が存在しないため、それぞれの歌は全く無秩序に展開されるのが大きな特徴となっている。指揮者は中心で演奏者に指示を出し、それぞれの歌が何とか同時に聞いても聞けるレベルになるように調整を行う*4。楽譜が存在しないので統一されたテンポの概念もなく、また終わりは指揮者のさじ加減で決まるので決まった長さも存在しない。

しかし、それでありながらこの音楽は一種の調和がある。秩序はないが、調和がある。その不思議さが、この曲の魅力だと思う。理論的には、同じキーのペンタトニックに調整した音楽を同時に流せば同様の調和は得られると考えられるが、この音楽にはそれ以上の工夫があるように感じられる。

GAMELAN SUNDA

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ガムランには、地方によっていくつか種類が分かれていることをご存じだろうか。ジャワ島の西の方で演奏されるガムランのことを、スンダガムランという。もっとも、素人目に違いが分かるような代物ではないのだが、調べてみたらよく分からないプレイリストがヒットしたので聞いてみた。

一通り聞いたわけではないが、ジャワガムランよりテンポがゆっくりしているのは大きな特徴ではないだろうか。……と思ったけどそうでもなかったか。旧都スラカルタを擁する中部ジャワのガムランは、おそらく最もかつての宮廷音楽に近い正式なガムランで、ジャワ・ガムランという名前がついているようなのだが、いかんせん名前の検索性が悪すぎる。そもそもジャワ島で演奏されるそれっぽい音楽のことをガムランと呼ぶので、中部ジャワ島のジャワ・ガムランを単独で探そうとしてもそれ以外のガムランが混入しまくる。困った。

笛の音はかなり特徴的な気がするな、うん。ジャワ・ガムラン(と思われる音楽)にはあまり笛の音は登場しない。

あとは、聞き直して気づいたけど、古典的なガムランは8分音符のリズムなんですね。現代ガムランで12/8拍子のガムランを聞いていたので「ああいうのもありなのか~」と思っていたけど、あれはアフリカ系のリズムを取り入れた結果生まれたものっぽい。

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聞いた中ではこの曲がお気に入りである。裏拍の鐘の音が心地よい。笛が主張しすぎではなく、全体として主従があいまいな調和の取れた音楽のように感じる。

なんとなく曲名でググってみたら、同名の曲がたくさん出てきた。インドネシア語としてはそれなりによく使われるフレーズのようだ。「愛する理由」とかそんな感じの意味っぽかった。

おわりに(雑記)

今週も思うように動けていなくて大変だ。せめて休日くらいは採譜などの重い活動をやりたいところだが。

モンスター新人の話が大変話題になっている。正直自分としては、自分もこうなっていないか不安でいっぱいだ。

anond.hatelabo.jp

今は急ぎのタスクがあちこちから投げられてきて、それに対処しているうちに本来の仕事ができなくなってしまうということが相次いで起きている。今週はようやく平常運転に近い状態に戻り、作業の遅れが見られる中コードのリファクタリングを行ったが、失敗と、なかなかの醜態をさらしていた。きれいなコードの書き方を覚えたい。きれいなコードを書くベストプラクティスを身に着けたい。TypeScriptのinterfaceの書き方を全ての言語でできるようになればいいのに……。このあたり長い時間をかけて解決すると、すごくいいネタになりそうだから、時間の許す限り継続的に取り組みたいと考えている。

*1:筝曲家とは、筝のほかに、三絃、地唄もこなせる奏者のこと。古典的な筝曲はこの3つで演奏することが多く、特に地唄は筝と同時に演奏する(弾き歌い)必要がある。

*2:MuseScore、微分音の再生ができなくて確認ができずキレた

*3:宮城道雄作曲の春の海が代表的である。

*4:Wikipediaによると、「男声および尺八奏者は舞台ではなく客席の外や客席内を歩きながら演奏し、また聴き手の周囲に音源が拡散・移動するように演奏する。ステージと客席は一体化し、場内全体が音で満たされることとなる。」とのこと。これを操る指揮者、大変すぎるだろ。