BsBsこうしょう

これは考えたことではなく思ったことです。

5/29~6/2に聞いた音楽

前回1週間ごとくらいがいいよね、という話になったので1週間くらいでサクッとまとめていく。

この2週間は後輩のプレイリストに突っ込む曲を真剣に探すことにしている。とはいえ、すでに曲数もカオスさもとんでもないことになっており、もはや自分の出る幕はないようにも感じられるが…。

全てのキュレーションに共通することだが、「自分が大好きな曲」を野放図に投げつけることを紹介とは言わない。相手の好みとニーズを理解した上で合致するものをおすすめする、相手に寄り添った提案をすることが大事である。どいつもこいつも好きな曲テキトーに投げやがって…。あとクラシック投げてる奴、お前はもう少し尖れ。

chibi tech

chibi techはアメリカ人の作曲家。チップチューンをとりわけ得意としており(ほぼチップチューン専業)、その作風には強烈な個性がある。

まあ、試しに聞いてみるのがいちばん早いだろう。chibi techを日本で有名にした曲、巫女みこナースファミコンカバー版だ。

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chibi techの特異さ、それはファミコン音源が喋る、歌う。人が喋っている声(その他様々な音高が一定に定まらない音)をフーリエ解析にかけることで周波数分析を行い、近い周波数の音を鳴らすことで擬似的に楽器上でその音の再現を行うというテクニックはスペクトル技法という形で実例が何件もあるが、極度に制限されたファミコン音源でそれを成し遂げてしまうのだから驚きだ*1。というより、後にも先にもこの技法をファミコンで使えるのは世界中の音楽家でchibi techしかいない。その意味で、chibi techは非常に大きな存在感を放つアーティストであると言える。

まあ、流石にファミコン音源では限界があるので、セリフや歌詞を読み取るのはそれなりに聞き慣れている必要があると思う。

個人的にchibi techの曲で好きなのは『Oniichan Dakara Iiyo』なのだが、この曲のいちばんおもしろい聞き方であるフル音源はSpotifyには上がっておらず、そのエッセンスが3曲ほどに散りばめて収録されている。

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その中でも山場となるHシーンにフィーチャーしたのが、『Hardcore Terrorists』だ*2。かなり前奏が長くて退屈するのがアレだけど、射精シーンの演出がバジリスクタイムもかくやと言うほどに超パワーアップされており、必見*3

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ではchibi techがファミコンお喋り芸一辺倒の一発屋というかというとそうでもなく、普通に曲を書かせても上手い。上手く曲書けないとお喋りのバックで曲を鳴らす曲も作れないので、まあそれはそう。

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名古屋ゲームミュージックアンサンブル 第10回演奏会

名古屋ゲームミュージックアンサンブル(NGME)は、名古屋を拠点に活動する、ゲームミュージック吹奏楽アレンジを主に演奏する楽団。名前自体は第9回の頃から存じ上げていたが、先日開かれた第10回演奏会のアーカイブが期間限定配信される報を受け、今回視聴させていただいた。

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アーカイブを見られるのは6月6日21時までです。まだの方はお早めに!

知らないゲームも多いので詳細に踏み込んだレビューはできないのだが、ゲームミュージックと聞いてやって来るようなお客様の層、つまり音楽を真剣に聞くことに慣れていない層への配慮が演出の各所にあり、会場に一体感があってとても楽しそうだった。特にリングフィットアドベンチャー。あれは動きを取り入れた演出がないと成り立ち得ないものだろう。素晴らしかった。

自分が高く評価するタイプの音楽ではないのだが、堅苦しいイメージを持たれやすい器楽側からそういったアプローチをするのは大事だと思うし、もっと作曲家、編曲家もそういう踏み込んだことをやっていくべきだと思っている。映画監督が音楽書くみたいに、音楽家が脚本書いてもいいじゃん。

内容的には、「そんなところから選曲するのか!?」という観点で、ブレスオブザワイルドメドレーの印象が強く残っている。はっきり言ってBOtWの曲は(ゲームが売れすぎたせいで)擦られすぎな印象が強くあり、おそらく編曲家にもその意識はあったと思う。しかしニッチな選曲ながら神獣のテーマという統一感もあり、また神獣のテーマはオーケストラチックで吹奏楽映えしやすいという意外な側面もあって、素晴らしい選曲眼、アレンジだなと感じた。

その他にも意外と「ピアノのゲームなのにピアノより合ってるんじゃないの?」なDeemo、ある意味定番だが曲数もアレンジも多すぎて毎度新鮮な気持ちで鑑賞できる東方Projectなどがあったので、興味ある人は今すぐ視聴を。

This Is TORIENA

TORIENAは、日本人の歌手、作曲家。chibi techからのチップチューン繋ぎで聞いた。

TORIENAといえば、『めでてえ』などに代表されるBeatmania IIDXでの連続収録が最近(といっても1年前くらいだが)話題になったカワイイクラブ系ミュージックを作曲するアーティストとして印象深いが、音楽家としてのキャリアはチップチューンからスタートしている。電子音楽なら基本何でもこなす多芸な印象があり、一通り聞いた感想では、日本人らしい短く目まぐるしく展開が移り変わるキャッチーな曲が多かった。非常に音ゲーマー受けしそうな曲だと思うのだが、収録機種に恵まれず音ゲーマー知名度は低い(と思う)。というより、意図的に音ゲーマーが好みそうな界隈を避けてそうな気配すらする、ちょっと変わったコンポーザーだ。

TORIENAが参加した曲で有名なのはやはり『大江戸コントローラー』だろうか。ただこれは歌唱での参加でどちらかと言うと曲調はYunomiの印象が強い。

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一通り聞いた中では『Not IDOL』と『SHIBUYA DAYDREAMER』を気に入った。

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ただ、両方チップチューンじゃないんだよな。This Isシリーズはどうやら最近の再生数に基づいて選定されていそうで、TORIENAがチップチューンを作っていた時期はサブスクが盛り上がるより前なのでなかなか出てきてくれない。CROSSxBEATS REVの『コードネームはEQ』で惚れ込んだ身としては少し寂しさもある…。というわけで、チップチューンのアルバムを追加で聞いた。

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利きチップチューンには自信はないが、多分TORIENAはゲームボーイを使ったチップチューンを作曲している(と思う…)。上で挙げたchibi techと比べてみると、日本人とアメリカ人の作る曲の差が分かって面白い。またさらに興味がある人は、前回ブログでのああああと比べてみると興味深い知見が得られるだろう。

おわりに(雑記)

今週は朝起きられない一週間でつらかった。朝起きられないと生産活動ができないので、累乗で作業効率に響いてくる。何とかしなければならない。

仕事後のTwitterは絶対にいじってはダメってレベル。おすすめタブを発明した人間を抹殺したい。おすすめタブを眺めて(おすすめタブにまで上がってくるツイートは不快なツイートが多いので)無駄に不快になるがやめられないという負の循環が続いている。物理的に封鎖する方法を探さなければ…。

日課のピアノは2時間は弾かないとロクに練習できないし、生活に満足感を得られない。ピアノを弾く時間の長さとTwitterを無駄に眺める時間の長さは不可分なので、やはりTwitterにケジメをつけるときが近づいているということなのかもしれない。

*1:通常のスペクトル技法では何重にも和音を重ねることが当たり前なのに対し、ファミコン音源では最大でも同時に4音、曲を奏でることまで考慮すると現実的には2音程度しか同時に鳴らせる余地がない。さらにその音色や音高についても大きな制約を課される。

*2:音楽のHシーンってなんだよ

*3:音楽の射精シーンの演出ってなんだよ