BsBsこうしょう

これは考えたことではなく思ったことです。

プロフェッショナル ICPCコーチの流儀

1. 序文と自己紹介

追記

来年度からICPC Asia Yokohama Resionalのホスト校が慶応義塾大学から東京工業大学に変わり、それに伴いここに書いた裏技も無効になる可能性があります *1 。僕に続いてコーチに関するドキュメントを書く人が現れることを楽しみに待っています。

12月27日~28日にかけて開催されるICPC Asia Yokohama Resional Contestまで、残すところ約1か月となりました。これに参加される選手のみなさんは国内予選を勝ち抜いてきた精鋭で、今大会もどういうドラマを見せてくれるのか楽しみにしています。

ところで、ICPCという大会は大学対抗という建前があるためか、特殊な仕組みをいくつか備えています。その最たるもののひとつにCoachという制度があります。Coachは大学院生もしくは大学の教員である必要があり、あらゆるICPCの競技に参加できません。しかし、ICPCへの参加登録、重要事項(の一部)の周知といったいくつかの本質的な部分について、Coachしか操作することができない手続きがあり、ContestantにとってCoachは必須のものになっています。毎年Coach探しに苦労している大学もたくさんあるだろうと心中お察しいたします。

ContestantはICPCの問題を解くという重要な役割があり、その上達の方法やチーム戦での立ち回り方などは多くの文献で盛んに解説・議論されています。その一方で、同様になくてはならない役割にも関わらず、Coachの立ち回りに関する文献は全くと言っていいほど見つかりません。

私、Badlyluckyは諸般の事情によりCoachを2020年から今年まで3年間勤めあげています。また、持ち前の不幸体質と注意欠陥により、ICPCのCoachが直面しがちなトラブルのほとんどを経験しています。大学院修士学生がCoachを務めることが多い中、3年間経験していることはICPC Asia Yokohama Resional Contest 2022参加のCoach陣の中でもまれで、Coachに関しては一流の経験をしていると言ってもよいのではないでしょうか。

そんな私が普段どのようにCoach業務を行っているかを、ご紹介したいと思います。

以下、Coachは「コーチ」、Contestantは「選手」と表記します。

2節でICPCのコーチがどのように業務を遂行するか、また効率よく業務を遂行するコツは何かについて書いています。3節では、3年ぶりのオンサイト開催となるICPC Asia Yokohama Resional Contestについて、おそらく散逸しているであろうオンサイトICPCの(非本質的な)注意点についてまとめています*2。4節ではここまで読んでくれた方へのおまけの情報として、ICPCのチーム練にも使える有志コンテストOUPC2022を紹介します。

2. コーチの主な業務

コーチの仕事は、主に3つです。

  • ICPCで参加登録を行う
  • ICPC運営事務局から来る各種メールの内容を選手に伝達する
  • (特に横浜地区予選について)チームの監督義務、印刷サポートなどを行う *3
  • (optional)その他、選手が十全に力を発揮できるようにサポートする

順番に説明します。

2.1. ICPCで参加登録を行う

ICPCに参加するためには、コーチが ICPC公式サイト でチームの登録を行う必要があります。

icpc.global

選手やコーチがどのようにアカウントを登録すればよいかは、公共財団法人 情報科学国際交流財団のICPC横浜大会ページ *4に記載されています。

icpc.iisf.or.jp

コーチが代理で選手のアカウント登録を行う機能もありますが、必須の設定項目が異常に多い ため選手自身がアカウントを作ることを推奨します。

画像は公共財団法人 情報科学国際交流財団 より引用

画像中にあるMAIN INFO, DEGREE INFO, CONTACT INFOタブ中にある項目をほぼすべて埋めることになります。具体的には赤か黒のアスタリスク (*) がついた項目は埋めておく必要があります。

DEGREE INFO中にある「Num Stem Semesters Completed」という項目は、留学していない場合たいてい0になります。

選手はこれらをある程度済ませたら、コーチにチーム登録してくれるようお願いします。このとき必要になる情報は、以下の2つです。

  • 選手3人それぞれの名前とメールアドレス
  • チーム名

チーム名は登録期間中であれば変更可能なので最悪なくても大丈夫ですが、3人の情報は知らないと登録できないので必須です。ただし、システム上は3人未満でもチームとして登録できるので、先に1人だけ登録しておいて、後で2人の情報をもらう(もちろん登録期間中に)という運用もありです。

選手を追加する際に表示される画面

選手の名前とメールアドレスは、登録間違いのリスクを考慮すると両方あるほうが望ましいです。選手を追加する際、名前とメールアドレス(メールアドレスにはSecondary Emailも含む)の両方で検索することができますが、名前はローマ字で登録するため情報量が失われます。そのため、「メールアドレスで検索し、名前が一致しているかでverifyを行う」という運用が最も安全となります。

以前、メールアドレスで一致するケースがなかったために名前で検索して登録したところ、間違って同姓同名の別人を登録してしまったという事故が発生しました。その点、メールアドレスは名前と異なりユニークであることが保証されるので衝突の心配がないというメリットがあります。

もし間違って別人を登録してしまっても、ちゃんと取り消せるので安心してください。

ICPCのチーム登録画面

チーム登録画面で登録を解消したい選手の右側のゴミ箱マークをクリックするとその選手の登録を取り消すことができます。失敗することもありますが、その場合左の鉛筆マークをクリックして選手のステータスを編集し、「Co-Coach」や「Attendee」などに変更したうえで再度取り消すとうまくいくことがあります。

しかし、このままでは 取り消し操作は実行できていません 。取り消し画面は一見レスポンシブデザインのように感じられますが、そうではないので、上にあるUPDATEボタンをクリックして編集を確定します。成功の緑色の通知が来てそれでもまだ取り消し操作が行われていないように見えるかもしれませんが、ページの更新を行うとちゃんと取り消しがうまくいったことが確認できます。

チーム登録する際の裏技ですが、まとめて一括で行うと後で少しだけお得になります。

ICPC横浜の登録完了・未完了チーム一覧

後から不正を行わないことを誓う誓約書に選手それぞれがサインしたか、事務局からどのメールを送ったかを確認するためにあるのがこのページです。ここではチーム名や大学名ではなく、チームIDによってそれぞれのチームを確認することができます。IDは icpc.global のチーム登録ページ、もしくはICPCで言うところの1通目のメールから確認することができます。ところで、このIDは登録された順に(numerical order)割り振られています。そのため、チームIDが連続するように一括でチーム登録を行えば、後でチーム一覧から確認を行うときに少し楽ができるというわけです。

上の画像では、696058から696064までのIDはすべて私がコーチを務めるチームです。

下の話にもつながりますが、たいてい1回はPREDICTED INELIGIBLEと出て突き返されるので、選手にプロフィールを更新するように伝える必要があります。密な連携が大事です。

2.2. メールの伝達

登録が済むと、ICPC運営事務局からさまざまなメールが散発的に届くようになります。その内容は協賛企業からのメッセージといった重要度の低いものから、大会当日に使うジャッジシステムにログインするために必要なパスワードのような超重要情報まで多岐に渡ります。そして、重要な情報ほどコーチにしか届かず、コーチが対応するチームの選手に伝達する二度手間をさせられるという仕組みになっています。

ここまで読んだ段階で分かる通り、コーチのメールチェックに対する責任は極めて重いです。なので、メールチェックは頻繁に行うようにしましょう。

3年間コーチを務めて分かってきたことがあります。それは、以上のように確かにコーチの抱える責任は重大ですが、その重大さを意識するとかえってわずらわしさが先行してメールチェックを行わなくなり、より悲惨な事態を招くという観察事実です。なので、コーチは徹底的に楽をする必要があります。

現在ではRAINBOUという名前がつきましたが、大阪大学競技プログラミングサークルはICPCに参加する選手やコーチを融通するために作られたという背景があります。そのための連絡用Slackが存在しており、サークルに名前がついた後も同じSlackでサークルの運営が続いています。つまり、ICPCに参加する人のほぼすべてがサークルのSlackに入っているため、去年からこれを活用した情報伝達を行っています。

現在大阪大学に所属している部員だけを集めた(これは名簿によって収集されます)チャンネルを作り、ICPCに関する連絡はそこかダイレクトメールを使って行うようにします。

これだけでも相当楽になったのですが、今年はもう一点工夫を加えました。それは、情報伝達に階層的な構造を設けることです。

ログが90日制限で見れなくなってしまい悲しみを背負っています……

チームのメンバー3人に伝達する必要があることがら、例えばPREDICTED INELIGIBLEの詳細情報やジャッジにログインするためのパスワードなどは、あえてメンバーの3人全員に伝えず 代表1人だけに伝えます。そして、その代表者に残りの2人に適宜共有するように伝えておきます。

この工夫により、コーチはメッセージを発行する手間を(チーム数)*3から(チーム数)に減らすことができ、大いに負担軽減に貢献します。これだけでも大きいですが、さらにいくつかの狙いがあります。

ICPCのチームは全く無感情に選ばれることは少なく、たいていある程度仲の良い3人が集まってチームを形成します。逆にコーチは赤の他人であることが多いです。赤の他人のコーチと、友人のチームメイト。どちらの連絡のほうが返信が速いかは明らかです。また、あえて1人にしか情報を伝えないという手段を用いることで、情報を伝えるためにコミュニケーションを取らなければならないという状況を強制し、そこからチーム練を行う約束を取り付けるなど、結束力を固めるきっかけにしてほしいという狙いもあります。さらに、1人にしか情報を伝えないということは、残りの2人に伝わっていなければその1人の責任になるということであり、コーチの責任が分散されます。また、特にチームメンバーの誰か1人が行わなければならない作業について、全員にメンションすると「誰かがやってくれるだろう」となって誰もやらないことになりがちですが、1人に連絡する対象を絞ることでこの逃げ道をあらかじめ塞ぎます。

代表者1人の選定方法ですが、Slackでの返信が速そうな人にお願いしています。具体的には公式スマートフォンアプリを導入している人は速めですが、それは外からは分からないので困りものです。ただ一貫した傾向として、Twitterに齧りついているツイ廃はSlackの返信も速い という傾向が観察されたので、それに従って代表者の選定を行っています*5。それでも代表者が見つからない場合は、知人やフォロワーなどの情報伝達のチャネルが多い人を優先して代表者に選んでいます。ただ、見込みが外れることも多々あります。そのときは、速やかに別の方に代表者を変更します。

2.3. チームの監督義務

そもそもICPCがなぜこんな回りくどい方法を取っているかというと、ICPCが古いコンテストだからでもありますが、それとともに選手の不正防止という観点の影響が強いと考えています。重要な情報をコーチだけに送れば、選手が誰かひとり不正したときにそれはコーチの責任(=大学の責任)になるという構図です。不正をする大学は出場を禁止することで大会の透明性を保っていたのではないかという……あくまでも予想ですが。

つまり、特に国内予選についてコーチは選手が不正をしないような環境作りに努める必要があります。

とは言っても、やること・やれることは少ないです。特に最近ではコロナウィルス感染防止対策のために選手に誓約書を提出させるようになったほか、自宅での予選参加が認められる、同時に複数台でのコーディングを認める、などルールが大きく変容しており、その中でコーチがやるべきことは(減る方向に)変化を遂げています*6

ルール変更の話は置いといて、今現在必要なくなってはいますが、国内予選を現地開催する際のテクニックについてご紹介します。将来再度必要になる可能性があるし、せっかくだから集まって参加したいという選手のニーズに応える必要もあります。

部屋ですが、電源タップが豊富に(長机1脚ごとに)あるような環境で、ある程度広い空間であることが望ましいです。競技プログラミングをやっている大学生の場合、ラップトップは通常持っていると考えられるので端末の有無は気にしなくていいでしょう。大阪大学の場合、大学の研究室に併設されているセミナー室が条件を満たすので、毎年1部屋借りて国内予選を開催しています。

重要なのは、コピー機と強靭な無線LAN環境です。

無線LAN環境については、情報系の研究室に敷設されているLAN(めちゃくちゃ速い)から、ICPC用に使う強力なルーター*7を接続して通信する方式を採っています。RAINBOUの設立過程にネットワーク系の研究室が大きく関わっており、そこから助けを得ることで競技プログラミング環境が大きく改善しました。来年から再来年にかけてはもしかしたら厳しくなるかもしれませんが、私は在籍していないのでお力になれない可能性が高いです。

コピー機については、接続しているルーターのローカルネットワーク内にあるプリンター1台を使います。研究室のLANを借りる場合プリンターは併設されていることがほとんどなので、この条件をクリアできます。ただし、ドライバーのインストールなど、コピー機を認識させるにはつまづきポイントがとても多いので、事前のチェックは入念に行うことをおすすめします。

コピー機の利用は、全チームが全問題の印刷を行う開始直後が最も多く、以降はほぼありません。開始直後だけはコーチひとりで捌き切ることが難しいため、印刷サポートを行う手伝いを何人か確保しておくとスムーズに作業を進めることができます*8。人数は現実的に調達できるラインを考慮すると、3チームにつき1人くらいがちょうどよいと思います。

コピー機を上手く設定することで、どのチームがどのプリントを印刷したかを事前の情報なしで特定することができるようにヘッダー・フッターを設定できそうです。できそうですが、結局できるようになる方法は分からずじまいでした。というわけで、最初以外はプリンターに印刷クエリを発行したチームはコーチに報告するという形式で行うのが無難そうです。

これらの業務を除くと、コーチは基本的に暇です。自分も持ってきたパソコンで好きな作業をしたり音楽を聞いたりするといいと思います。私はよく論文を読んでいます。

2.4. (optional)その他サポート

せっかくコーチになったのだから選手たちのためになることがしたい! と老婆心が働くこともあるかと思います。このセクションはそのためのページです。

2.4.1. Asia Yokohama Resional Contestにおける宿泊地の調達

仮に国内予選を勝ち上がり、Asia Yokohama Resional Contestに行けたとします。23区在住なら準備することは特にないですが、遠隔地在住の場合、面倒が降って湧いてくることになります。すなわち、「宿泊地をどうするか?」です。

日本におけるICPCは例年慶応義塾大学がホストとなって開催しており、Asia Yokohama Resional Contestは横浜産貿ホールで行われることが通例となっています。開催期間は2日あり、最初の1日で登録とジャッジシステムのリハーサル・テストを行い、2日目に本番のコンテストと結果発表をします。

www.google.co.jp

また、宿泊する必要がある程度の遠隔地*9であると運営事務局から認められた場合、宿泊費1泊7000円が支給されます*10*11

日時、場所と予算が提示されたので、宿泊ホテルを選定することができるようになりました。この作業はとてもとても面倒なので、できれば選手に任せずコーチがまとめて行いたいところです。

私がホテルを選定する際、重視した項目は以下です。

  • 会場から近い(徒歩5分以内)
  • 質の良い朝食サービスがある

この2つはまとめて説明できるのでまとめて説明します。2日目、つまり本番が行われる日ですが、(記憶が少しあいまいなのですが)例年午前9時にスタート*12します。事前の準備などを考慮すると、午前8時30分には会場に到着しておくことが望ましいです。そして、そこから激重セットが5時間続きます。つまり、朝型以外はめちゃくちゃ不利です。ではなく、選手が万全な状態を保つには、できるだけ長い睡眠を確保でき、さらに移動にストレスがない会場近接地に拠点を構えること。そして眠気をリセットして気持ちよくコンテストを迎えるために(あるいは最適なパフォーマンスを発揮するためのルーティンを行うために)温かい普段通りの朝食が必要、というわけです*13

1つ目の条件を満たすことは比較的容易です。なぜならば、横浜参賀ホールはかの横浜中華街のはずれに位置する一等観光地であり、宿泊するホテルには困らないからです。しかし、2つ目の条件を満たすことは難しいです。観光地であることが仇となり、付近にまともな飲食店が存在しない砂漠地帯となっているためです。コメダ珈琲も午前9時開店で当てになりません。「飲食店がないなら中華街に行けばいいじゃないか」という意見がありそうですが、中華街は昼からが本番なので、早朝に営業している店はありません。つまり、外食に頼ろうとするとコンビニくらいしか選択肢がないのです。

そこで、ホテルのサービスとして出している朝食に目をつけました。しっかりしたホテルの朝食サービスであればまともなサービスが受けられる可能性は高いので、多少割高でも許容範囲に収まるだろうということです。

以上の条件からホテルを探し、それらを満たすホテルを発見しました。

www.daiwaroynet.jp

www.google.com

これで十分なはずでした。去年までは。

今年のAsia Yokohama Resional Contestは、12月27日~28日にかけて開催されます。年末商戦真っ盛りであり、平常の値段より1000円以上高いプランを吹っかけてきました*14。予算を大きく超過してしまい、途方に暮れています。

さて、先ほど私が考案した宿泊地の条件を紹介しましたが、今年に入って若干の不備があることが判明しました。追加の検討するべき条件は以下の3点です。

  • 部屋の鍵が暗証番号
  • 狭すぎない
  • 騒音

競技プログラマーは破滅的な生活をしている人が多いので、たとえICPC本番であっても朝起きられないケースを想定するのは自然です。そのため、外から無理やり開けて叩き起こしに行けるようにする仕組みが備わっていることは重要です。

残り2つはoptionalですが、騒音は結構重要なファクターになる気がします。電車や車の騒音は立地をうまく選ぶことで避けられるかもしれませんが、空調と冷蔵庫の音(リズミカルなため意外とうるさい)を事前に察知して避けることは不可能です。選手の皆さんは、耳栓を持っていくことをおすすめします。

愛用のMOLDEXの耳栓です。

以上の新しく増えた条件をもとに、すごいこたまねぎさんがすごいホテルを見つけてきました。

www.superhotel.co.jp

www.google.com

ダイワロイネットと立地・サービスは同等で、値段はお安め。もう決まりですね。

2.4.2. Asia Yokohama Resional Contestにおける食事場所の斡旋

会場が観光地の一等地にあるということで、朝食の確保が困難であるという話はすでにしました。実はこれは1日目の夕食にも当てはまります。確かに1日目の夜は横浜中華街が営業中なので、そちらに行くというのはひとつの手だと思います。しかし、基本横浜中華街はおいしくて高いか、おいしくなくて高いかしかないと思った方がいいです。現地民に怒られそうですが、外様から見た観光地などどこも同じようなものです。

というわけで、「せっかくの旅行なので奮発したい~~」という意思統一をチームとコーチの間でできれば、横浜中華街で夕食を食べるのはありだと思います。ですが、1人当たりの数千円の追加費用を負担させることを複数人の間で合意を取るのは、並大抵のことではないと思います。今回ご紹介するのは、安く済ませたいというケースです。

とはいえ都会なので、どの方向に行っても食事には困りません。そもそもこの時間であれば中華街外延部にサイゼリヤやジョナサンが営業していますし、少し奮発して横浜方面に繰り出すことでもうちょっといいものも食べられます。

ただ個人的におすすめしたいのが、横浜臨港幹線道路沿いに徒歩で移動し、赤レンガ倉庫を横目に見つつ横浜みなとみらいに抜けるルートです。赤レンガ倉庫で夕食を食べられるのは貴族だけですが、みなとみらい周辺の商業施設には思いつく限りの豊かな食事があり、ほとんどがリーズナブルです。以前行ったときは、席数にも全体的に余裕があるように見受けられました。

残念ながら赤レンガ倉庫はクリスマスイベントの解体中で(おそらく)イルミネーションを拝むことはできませんが(おそらく)、それでもライトアップはされていて(たぶん)観光地のない恥じない立派な陣容をお目にかけることができるでしょう(たぶん!)*15

また、赤レンガ倉庫は歴史があるので各種アニメコンテンツの聖地としても知られています。最近では『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会TVアニメ2期』で登場したことが記憶に新しいですね。調べてみたところ、みなとみらい地区や中華街周辺にはニジガクの聖地がいくつか点在しているようなので、興味がある方はめぐってみてはいかがでしょうか?

www.motsu-tanbou.com

みなとみらい近隣で12月27日に開催される特別なイベントは確認されませんでしたが、何分年末なので人流は全く読めない状態です。めっちゃ混んでたら多分現地にいるBadlyluckyを探して一発蹴りを入れましょう。

2.4.3. 国内予選でのその他サービス

国内予選が終了するのは午後7時。遅めの時間で、遠方から来ている学生のことを考えると国内予選終了後に何かするというのはあまり好ましくありません。

ただ何もしないというのも寂しいので、RAINBOUでの働きかけとして参加者同士が国内予選の感想を言ったり解説しあったりする会合をDiscord上に設けています。

大阪大学競技プログラミングサークルRAINBOUでは、ほぼ毎週開催されるAtCoder Beginner Contest(ABC)の感想を言い合う会をABCの終了後に行っており、それの延長上というわけです。ICPCはRAINBOUが取り組む最も大きな活動のひとつであり、所属している部員の半数ほどが何らかの形で関わっています。頻繁に感想会に出席する方はもちろんICPCにも出るので、ICPCの感想会はさながらオールスターの様相となります。

交流のチャンスにもなりますので、こういった活動が他大学の競技プログラミングサークルでの参考となりましたら幸いです。

2.5. 国内予選だけで使えるスケジュール管理の裏技

少し順番は前後してしまうのですが、ここで国内予選だけで使える裏技をご紹介します。

とある工夫をすることで、国内予選での鬱陶しいメールチェックやregisterの時期の把握を楽にできるというものです。残念ながら、人数が格段に少なくなるAsia Yokohama Resional Contestでは使えなくなってしまいますが。

それは、日本のICPC公式Twitterアカウント@icpcjapan をフォローすることと、大学生の競技プログラマーTwitterアカウントをたくさんフォローすることです*16

ICPC公式アカウントでは、国内予選については 登録時期や注意点、その他重要な告知などを過不足なく行っており、コーチも選手もフォロー必須です*17

また、これまでに何度か「競技プログラマーにはツイ廃がいる」ということを取り上げてきましたが、これを逆利用することでスケジュール管理ができます。

ICPC国内予選関連で何か動きがある(レジが始まる、メールが来る、誓約書を提出する)と、ツイ廃の競技プログラマーはそのことをつぶやきます。つぶやかないケースもありますが、そのためにたくさんフォローしてサンプリング数を増やして安定させます。後は、そのつぶやきを察知して自分たちのチームにフィードバックするだけです。

今年の国内予選で定点観測に利用したまさぁぁさん。彼らのおかげもあって無事ICPCのスケジュール管理をしのぎ切ることに成功しました。まさぁぁさん、その他多くの愛すべきツイ廃の競技プログラマー諸氏、誠にありがとうございました。

無論、案内が最初にコーチに来るということを念頭に置けば、本質的にはこの手法は他大学のコーチに依拠する戦術で褒められたものではありません。すべてのチームがこの戦術を採用するとスケジュール管理は瓦解することになります。なので、これはあくまで保険として考えておくといいと思います。

3. ICPC Asia Yokohama Resional Contest 2022に関する各種お知らせ・注意事項

今年のAsia Yokohama Resional Contestは実に3年ぶりとなるオンサイトの(日本の)ICPCです。空白期間があり、その特異性がうまく伝わっていないかもしれないため、ここにまとめておきます。競技面においては大幅な変更が加わる可能性があるので、それ以外について述べるに留まりますことをご了承ください。

3.1. 選手・コーチの方へ

まず、ひとつだけ厳しく注意しておかなければならないことがあります。

名札を持ってきてください! 競プロerとしてのスクリーンネームか、Twitterのアカウント名が大きく書かれた名札を持ってきてください!!! 表と裏で2枚必要です*18!!!!

Asia Yokohama Resional Contestでは、ありがたいことに会場で着るTシャツや名札を運営事務局が配布してくれます。

しかし、この名札には大きな欠陥があります。本名と所属大学しか書いてくれないのです*19。普段スクリーンネームTwitterのアカウント名で他者を認知している競技プログラマーにとって、これはものすごく致命的です。頻繁に会っている人ならまだしも、会場には似通った情報オタク顔がずらりなので、ちょっと顔を知っている程度では目的の人を見つけることも困難です。

追記

実際に交流を行ったところ、ICPCでもらえる名札の大きさでは識別子として不十分であることが分かりました。ICPCで配られる名札は名詞サイズですが、両辺2倍ずつの長さ、4倍ほどの面積を持つ巨大な名札カードを 別に持って行く くらいでちょうどよいと思います。

また、本名は無駄に情報量が多いうえ衝突の危険性もそれなりにある最悪の識別子なので、最初からスクリーンネームでコミュニケーションを取ったほうがスムーズです。どのみち自己紹介のときにスクリーンネームTwitterアカウントを開示するのだから、最初からスクリーンネームを出しておかないと二度手間ですらあります。

chokudaiさんはスクリーンネームが分からないことの影響をよくご存じなので、このようなことをおっしゃっています。僭越ながら、私もまったく同意見です。

Twitterアカウントを最初から開示しておけば、「Twitter見てください」で自己紹介も終わり大変効率的です。やらない手はないと思うのですが、いかがでしょうか。

なお、名札は通常の名刺サイズでOKです。もう少し大きいサイズも入るネームホルダーですが、そこで冒険することはないと思います。

選手の方にもう少し役に立つことをお教えしておくと、会場に持ち込める道具については厳しい規制があります。電子機器は(外部との通信をしないデジタル腕時計等含め)一切持ち込めないので、そのつもりでいてください。よく紙の辞書が必須なんて言われたりしますが、実際にはCode Forcesなど海外コンテストに頻繁に出てる人なら割と読めるのでいらない説もあります。また、守り神やマスコットと称してぬいぐるみを持ち込む方も比較的よく観察されましたが、現代でもその習俗が生き残っているかは不明です。持ち込みが厳しいかわりに、会場には大量のお菓子が用意されていてコンテスト前でもコンテスト中でも自由に持ち出すことができます*20

あと、28日、つまり本番当日は(平常ならば)交流会と名乗る立食パーティが開催されます*21。どういうことかと言うと、不十分ではありますが、28日の夕食についてはあまり考えなくともよいということです。人によっては28日夜新幹線で帰還する方もいるので夕食のことを考えると慌ててしまうかもしれませんが、その心配はいらないということです。安心して楽しみましょう!

3.2. コーチの方へ

3.1節でお話したことを踏まえていればあまり問題はないのですが、コーチにも一考しておくべき点があります。

選手が本番のコンテストを受けている最中、コーチは暇です。国内予選よりも輪をかけて暇です。どれくらい暇かと言うと、横浜産貿ホールを飛び出して秋葉原に行き、ほどほどにゲームして、飯食って帰ってきても、なお時間が余るくらい暇です。

また、コーチ用の待機場所は用意されないように見受けられます。座るスペースも限定的で、ひたすら待ち続けるのはすごくつらいと思います。

追記

実際にはコーチ・関係者用の十分な机と椅子がある待機場が用意されており、そこでICPC Asia Yokohama Resionalのミラーコンテストを解くなどの楽しみ方がありました。昼食も配布されます。ただ、時間は長いので充電器などの予備電力はほぼ必須だと思います。 また、選手たちの荷物を預かるクロークもなくなっており、選手の大きな荷物はコーチが預かる必要が生じました。非常に不便なので、外を出歩く際は馬車道駅のコインロッカーを使う対策を講じました。*22

机もないので、持ってくるとしたらNintendo Switchのような、持って操作ができる暇つぶしをおすすめします。

というわけでまあ、おしゃべりしませんかという気持ちになっています。他大学の競技プログラミングコミュニティがどのように組織運営、活動しているかは、私としても気になるところだし、それが国内予選を勝ち抜くような精鋭とあらばなおさらでしょう。もっとも、言い出しっぺの自分はこのブログ記事で吐き出しつくしたので、もう言えることは何もないのですが……。

名札見ればBadlyluckyであると分かるようにしておくので、テキトーに名乗るなり「ブログ見ました」みたいなありがたいことを言ってくれればお話できると思います。

テキトーに現地に突っ立って何もなければ、最寄りの馬車道駅にあるストリートピアノに遊びに行くと思います。ちょうど本番1直後なんだよね。

4. 最後に (ここまで読んでくださった方への告知)

追記

来年度からICPC Asia Yokohama Resionalのホスト校が慶応義塾大学から東京工業大学に変わり、それに伴いここに書いた裏技も無効になる可能性があります *23 。僕に続いてコーチに関するドキュメントを書く人が現れることを楽しみに待っています。

ここまで拙文にお付き合いくださり、大変ありがとうございました。最後に告知をしてこのエントリを締めたいと思います。

来る11月20日(日)、大阪大学競技プログラミングサークルRAINBOU所属の学生が中心となって開催するプログラミングコンテスト、OUPC2022を開催します。

このコンテストにはAsia Yokohama Resional Contestに参加する大阪大学の学生のうち、TLE_WARLDの全員とGirigiri_yellowsから1名参加しています。私もチョットお手伝いをしています。

今回は前回OUPC2021と比べてチーム制限をとても緩くしたことで、そこそこ多くのAsia Yokohama Resional Contestに参加するチームがチーム練として活用できるような仕組みになっていると思います。

今年のチーム制限。3人の場合、平均AtCoderレーティングが2800になるまで許容。

Aizu Online Judge 上で開催予定です。

onlinejudge.u-aizu.ac.jp

この記事をご覧になった選手の皆さま、ぜひ出場していただけないでしょうか? また、この記事をご覧になったコーチの皆さま、Asia Yokohama Resional Contestに出場するチームがいましたらぜひ勧めていただけないでしょうか?

コンテストページは前日か、それよりもっと直前に開くと思います。最新の情報はOUPC公式Twitterアカウント @rainbou_oupc をフォローしてお待ちください。またリツイートなど情報拡散をよろしくお願いします!!

*1:おそらくそのようなことはないと思いますが……

*2:本質的な部分は3年の空白を経てそれなりに改訂されると予想しているので書きませんでした。

*3:近年はCOVID-19感染拡大防止のため柔軟な対応が認められており、この部分の仕事は少なくなりました。

*4:このページは毎年更新されるので、来年以降は来年分のものをチェックしてください

*5:リアルが充実しているからとかはありそうですが、どちらかと言うと視覚優位とか聴覚優位とかそのあたりに起因する現象な気がします。

*6:今後かつての形式が戻ってくる可能性はありますが、大変な不評を買うのは明らかなので変更しないと思います。

*7:専門家に任せているのでメーカー、品番などは分からず……

*8:もちろん彼らにも印刷サポートに関する誓約書を提出してもらう必要があります。

*9:基準は明確にされていませんが、大阪と仙台はクリアしていると思われます(本当???)

*10:今後値上がりする可能性があります。

*11:昔は6000円だった気もする。

*12:点呼だったかも?

*13:競技プログラマーが普段温かい食事を食べているかは議論の余地があります。

*14:最初この情報知ったとき、ヤることしか頭にないサルどもがと一瞬思ったけど、まあ普通に年末シーズンですね。

*15:その分邪魔な人間も多いので、それを嫌気する人は行かないほうがよいかもしれません

*16:20~30アカウントもフォローすれば十分な効果を期待できると思います。

*17:残念ながらAsia Yokohama Resional Contestでは急に沈黙して全く参考にならなくなります。

*18:内容は同一で可

*19:まあ、よく考えれば当たり前ではある。

*20:今年もあるかは不明。

*21:現状のCOVID-19の情勢を鑑みるに、これがなくなる可能性は大いにあります。

*22:馬車道駅を含む首都圏のコインロッカーは、電子式で暗証番号さえ教えれば誰でも引き出すことができます。

*23:おそらくそのようなことはないと思いますが……